俺達が席についたのを目で確かめると、やけにニコニコとした笑みを浮かべながら話し出した。

「いやー、今年の俺のクラスは豊作だな〜。首席の二階堂に陸上推薦トップの八神。それになんとなんとヤンキーで有名な佐伯!!」


おいおい、ヤンキーで有名なって…それ言っても大丈夫なのかよ。

あまりにも得意げな担任の様子に思わずツッコミを入れた。それから軽く周りを見渡す。


ヤンキーみたいな奴とかいなくね?金髪とかピアス開けてる奴とか1人もいねーぞ。

どうやらそう思っているのは俺だけって訳はなく、辺りをチラチラと見渡しては不思議そうな顔をする奴が何人かいた。

瀬奈はどんな様子か気になり視線を前に戻せば辺りを見渡してはおらずただ背中がゆらゆらと揺れていた。


こいつっ、まさかちょっと寝かけてんじゃねーだろーな?やめろやめろめんどくせー…。


そう思った俺は軽く溜息をつき、周りにバレないように、だが座っている本人にはしっかりとダメージがいくように下から蹴り上げてやる。


そうしてやれば彼女はビクッと肩を揺らして少し後ろに椅子を引き下を確認していた。
まぁ俺はもう足を引っ込めていたから何が起こったかは把握出来てねーかもしんねーな。
後で軽くネタバレしといてやるか。

と、いつの間にか全く趣旨が違う事に夢中になっている間に担任はネタばらししようとしていたらしい。
俺が担任に意識を戻せば担任は今度はニヤニヤとしながら話し出した。


「残念な事に今日は佐伯来てないんだなー。
まぁだから俺もヤンキーで有名な佐伯って紹介できたんだけどな!あははー。」


今理解した。
こいつはいざって時に絶対に頼りにならないタイプの教師だと。こいつと俺1年やっていけるのかが急激に不安になってきた……。


そう思ったのは俺だけではなく隣に座っている奴は軽く頭を抱えて溜息をついていた。
全くもって俺も同感だな。子守は俺の前の奴だけで充分だっての。



色々とツッコミどころが多すぎる担任の話が終わりもう残すは帰るだけとなった。


「ねーねー、琉生!佐伯君の席って私達めっちゃ近くない?」

そう瀬奈に言われて、辺りを見渡せばなるほど、確かに空いてる席はもう1つしかない。
てゆーか


「お前の隣じゃん。」

そう。こいつにとっては近いなんてものじゃないんだ。すぐ隣だ。

絶対こいつちょっかいかけるか、かれられるかどっちかだな。まーためんどくせー事になるわ。あー、勘弁してくれ…。

そういう目で見てやれば彼女はその目に気付いたのか肩をギクッとさせる。

「わ、私だって流石にヤンキーには話しかけに行かないよ!多分…。」
「その多分が信用出来ねーんだよ。」
「うっ……。」

彼女自身も自覚しているのだろう。自分の性格を。ならもう少しいい子に出来ないのか。


「いい子にしてろよ。」
「!?そんな子供扱いしないでよ!」

そう騒ぎ出した彼女の額を前髪を掻き分けてさらけ出して俺渾身のデコピンをかます。

「あ痛!な、何するの!!」
また若干の涙目になりながら訴えてくる。
そんな彼女の後頭部を軽く掴み俺の額と彼女の額を合わせる。

「いいか?短時間だがお前の性格は良く分かった。頼むから余計な事に首を突っ込んでくれるなよ。」

そう念を押せば顔をが近い事に戸惑っているのかなかなか返事をしなかったが後頭部を掴む手に力を込めれば慌てたように返事を返してきた。


「わ、分かったよ、絶対に話し掛けないからそんな頭強く掴まないで割れちゃうよ!!」
「はいはい。」

そう言って離せば瀬奈は大袈裟に頭の様子を確認していた。

「ちょっとへこんでる気がする…。」

はっ、
「そんな訳あるかバァーカ。」