「スーハー…スーハー……」

何してんだこいつ。
俺達は暫くの間ずっと保健室で話していたがふと俺が保健医の言葉を思い出し、教室まで戻ってきたまではいい。だが。

こいつが眠って起きるまでが約10分。ここまで来るのに15分以上かけている。
合計約25分。それほどの時間を何もしないで待っていろと言う方が間違いな訳で…
もれずに俺達のクラスもしっかりと始まっていた。


んで、冒頭に戻る。
俺らのクラスは他に比べて少し活気がありそんなクラスの雰囲気に怖気付いた瀬奈は深呼吸をし始めた。ったくそんなんで何かが変わる訳でもねーのにな。単なる気休めだってのになーにをやってんだか。

「なぁ、もういい加減に行こーぜ?ここでずっと深呼吸して立って余計に入りづらくなるだけだぜきっと。」

そう諭せば若干の涙目で返してくる。

「頭では分かってても体が動かないんだもんしょうがないじゃーん……。」


消え入りそうな声で返してくる彼女に軽く溜息をついてみせる。

それにビクッとした彼女の手首を掴み、にっこりと笑ってみせた。

「大丈夫だ。今から俺と突っ込むんだからそんなの関係ねー。」
「え?ちょ今のどういう意味っ…!」


まだ俺に話しかけている彼女の言葉を完全スルーしながら勢いよく扉を開けた。


まさにシーン…という音が相応しい空気になった教室内にも面倒くさくなり瀬奈の手を握ったまま担任の方を向く。


「…すみません、遅れました。」
まあ遅れたどころの話ではないがな。

自分で言った事に自分で突っ込みながらさっさと謝罪をすませる。
まだ少し放心状態の彼女をチラッと見て視線で促せば彼女も慌てたように謝罪をする。


「す、すみませんでした!」


おぉ、たった一言だけで人間性ってここまで出るんだな、気持ちがこもってるかこもってねーかがすげー分かる…!

と、少しいやかなり下らない事で感動しているとお前は本当に教師なのかと聞きたくなるくらいのだらっーとした返事が返ってくる。

「おー。聞いてる聞いてる。お前らあそこの席な。あー、二階堂が前でその後ろが八神になるように座れよ。」


…なんとも気が抜ける声だ。

ともあれやっと席に着ける。そんな思いで席に向かえばまだ手を握っていた事に気づき急いで話した。


彼女の温もりを失った手がいつもよりも冷たく感じるのは単なる気のせいだろうか。