「おい、、。何突っ立ってんだよ。」

不意に声がかかる。

その声の主はこの世で一番会いたくないヤツだった


「、、。濡れんぞ」


その顔に似合わない、真っ赤な傘がかかる。


良かった。雨で泣いてたことバレてないみたいだ。


「うるさいな。濡れたかっただけなんだけど。」

「風邪ひくぞ。」

「、、、。おせっかい。」


「悪かったな。おせっかいで。」




降られたのだってあんたのせいなのに。



「帰ろうぜ。」

「一緒に帰るわけないでしょ。」

「昔は一緒に登下校してたじゃねーか。」

「、、小学校の時じゃん。」

「薫と、俺と花音の3人でな。」


っ、、、。


薫。今はその名を聞きたくなかった。


「はぁ、、。早く帰ろうぜ?」


「晃なんかと一緒に帰らない!」


「そーかよ。じゃ、俺は先帰るわー」


私と晃、そして薫は幼なじみ。

ちっちゃい頃からずっと一緒で、ちっちゃい頃から



薫が好きだった。




薫はクォーターで、おばあちゃん譲りの綺麗な金髪が目印な、カッコいい幼なじみ。

気さくで人気者な彼は、うちの高校の王子様。

家が隣で、すぐ仲良くなった。


それに比べて、地毛の黒髪を銀に染めてる晃は
これまた家が向かいにあり、ちょっとチャラチャラしてる幼なじみ。

チャラチャラしてるからか、無駄に目立つ。

学校は違うが、幼なじみという点と、学校がさほど遠くないところにあるのでよく、鉢合わせる。


そして私は、黒髪セミロングの地味女子で。
目立つ幼なじみが二人もいるので、女子のやっかみしか買っていない。


「、、、私に傘貸したら晃が濡れるじゃんか。」



雨の中走り去った晃を見ながら、そんなことを思う。

後で渡せばいいか。



ざぁざぁ、、。

傘に雨水があたって散る。



もう少しだけ浸らせてよ。



薫に降られたばっかりなんだから。