一緒の食卓でご飯を食べる。

ちゃんとご飯を食べているのかと心配になる程細い腕。


ユウトとマサトが仲よさそうに話しているのに

私は緊張しっぱなしで

あー、今日の唐揚げいつもより美味しいな〜とか

無駄につけているニュースを見て、世間は物騒だなー、とか。

お母さんがお皿を洗う、カチャカチャという音を聞くとか。


そんなどーでもいいことをしてしまっている。


いやいや、頑張れ、私、会話に入っていけ!



5年も会っていなかったのに今更なにを話せばいいのかわからなくて


いや、嘘です。

マサト、なんでお前はそんなにユウトと仲がいいんだ

とか

私、あそこでバイトしてたんだ、いつから気づいてた?

とか

今日、あれからどうなったの…?

とか

話したいことはいっぱいあった。


いっぱいあったけど、どれも聞くことはできない。

から、黙ってユウトとマサトの会話を聞いていた。


「ねぇちゃん、高2にもなって彼氏の一人や二人、いないんだぜ!?」


「なッ!?」

マサトの突然の話題に、私は驚きを隠せない。


ちょっと!なんの話ししてるの!


バカ弟を殴りたい衝動に駆られた。


いや、嘘じゃねぇじゃん。とマサトの目が言っている。


いや、事実だけど。

ずっとずっと大好きな人がいて、恋人なんかただの一人もいませんけども。


その人がクソたらしだと知っても、全くその恋は冷めてくれませんけども。


ハッとユウトの顔を見る。


見事なまでの苦笑い。
「えぇ〜、可愛いのになぁ〜」なんて、優しい言葉をかけてくれているけど、苦笑い。


ほら、なんて返せばいいかわからなくなっちゃってんじゃん!


マサトの馬鹿!アホ!


「ユウト、ねぇちゃんと付き合ってやってよ〜〜」


嘘!マサト最高!大好き!



ユウトが、「えー?」と笑いながら、まっすぐと私の方を見た


私の心臓が、ドクン!ドクン!と大きな音をたてる。




「それは無理だよ。だってチカちゃんは、家族みたいなもんデショ?」
「ねー、チカちゃん」




天使の笑顔で、悪魔の言葉

が、私に降りかかる





「あー。ねぇちゃん死んだわ」

私の横でポツリと弟が呟いた。








私、桜井千夏

大好きで
大好きで
大好きで
大好きな
幼馴染に

5年ぶりに再会して見事


砕けました。