それから月に何度か、ユウトは彼女を連れて店に来るようになった。

まあ、驚くべきことに、この5年でユウトは立派なクソたらしへと成長していた。


どういうことかって?


連れてくる女の子が!

毎回違うってこと!


初めの頃は、女友達かな?なーんて思ってたけど

普通に恋人繋ぎだし?

1つのグラスを2人で飲むし?

え、毎回違う女の子とそういうことしちゃうの?ユウト君?ん?


しかも、ムカつくことに私のことを覚えてない!


仮にも同じマンションだよ!?

少なくとも10年以上一緒にいたのにもかかわらず…


もしかして、もしかして、また仲良くなれたりしないかな!?

連絡先くらい交換できないかな…


なーんて、期待する可愛らしい乙女心を返せ!

私のプレパラートはバッキバキだよ
粉々だよ

さようなら、私の初恋…


そんな私の思いを全く知らず、ユウトは瞬く間にバイトの女の子の間で、カッコいい常連さんとして話題になっていた。






パンッ!と乾いた音がお店に響く

何事!?と思って、音がした方に振り向くと、なーんと、ユウトが女の子にビンタされてました☆


ユウトの前に立つ可愛い女の子は




「私とサヤカ、どっちが好きなのよ!!」



と、ボロボロ涙を零していた。



うわぁ、修羅場やん…と思ったのは私だけじゃないはずだ。



ユウトは、何事もなかったかのような顔をして、細い指で後頭部を掻く。



そしてまた、ニコッと天使スマイルを1つ


「…いや?」


いや?


聞き耳を立てているお店中の人が、???思った、と思う。







「どっちも好きじゃないよ?」




その天使スマイルから紡ぎ出される言葉は、なんと残酷だろう。



「…なによそれ……。」



お店中がホントだよ…と心が1つになった。


女の子が涙を流しながら走り去っても、ユウトは何事もなかったかのようにコーヒーを啜る。


バチッと目があった。それはもうバチッと。

スタスタ〜と私の方に歩いてくる。

「やぁ、チカちゃん久しぶり」なんて、話しかけてくる。


おーい、おにーさーん、頬、赤いですよ〜。


あ、氷で冷やしますか?


昔の私よ。


小学校の頃の王子様のようなユウトに恋をしている私よ。

あんた、サイテーな男に恋してますよ。