「怖がらせるつもりは全くないんだが…。まぁ、あれだ。俺も限られた時間の中でどうお前を振り向かせるかに必死ってことだ」
「…!」
「ずっと我慢してた分、どの程度ブレーキをかけるべきかの加減が難しいな。…ま、とりあえずコーヒーでも飲むか。ここに持って来るから待ってて。福と遊んでてもいいし、好きに本をいじってもらってもいいし。楽に過ごせよ」
そう言って部屋を出て行った課長を無言で見送る。
…彼氏って。
…優花って。
「~~~~~~~っ」
思い出すだけでも全身から火を噴きそうだ。
…そう。私はあの日、期間限定の恋人になって欲しいという課長の申し出を、結局突っぱねることはできなかった。
自分の選択は間違ってる。
断ることを前提でそんな無意味な時間を過ごすのはおかしい。
嫌と言うほどそれを自覚しているはずなのに。
それでも、どうしても、あれ以上拒むことができなかった。