「あ~、今日は絶好の昼寝日和だ…」

油断すればすぐに閉じてしまいそうになる瞼を必死にこじ開ける。
午後の就業開始まであと十分ほど。とてもじゃないけどうたた寝などできそうもない。
もう少し早くここに来られてさえいれば。

あぁ、窓から燦々と降り注ぐ太陽が恨めしい…

「…やっぱり本でも読むかぁ」

特に用事でもない限り昼休みに私が足を運ぶのは、ここ、自称「秘密基地」。

ここに来るようになって3年ほど経つけれど、不思議なほどここで人に遭遇したことはない。存在を知っている人はいるのかもしれないけど、ちょっと…というか大分埃っぽいから、敬遠されているのかもしれない。

結果的にそれが私にとっては願ったり叶ったりなわけだけど。

「…それをまさか課長に見られてたなんて…」

そこまで口にしかけてガバッと立ち上がって空を見上げた。
言われて見れば確かに窓の端の方に非常階段がほんの少しだけ見えている。

そこに人影がないのを確認すると、ほぉーっと安堵の息をついて再びソファーへ腰を下ろした。