天使の傷跡


意味がわからず首を傾げる私に、尚も課長は真剣に言い募る。

「すぐに結論を出さず、もう少し俺と向き合ってくれないか」

「えっ…」

それはつまり、既に断っているあの話についてに他ならない。



「……二ヶ月」



「え?」


「二ヶ月でいい。その間、仮でいいから俺の恋人として過ごしてほしい。その時間を過ごしてもやっぱり俺とは無理だっていうなら、その時は潔く身を引く覚悟でいる」

「…っ」


『身を引く』

そう望んでいるのは自分のくせに、その言葉にズキンと胸が痛む。
そんな資格なんかありもしないのに。


断らなきゃ。
二ヶ月なんて意味がない。
私に課長を受け入れる覚悟がない限り、断る以外の選択肢なんてあるはずがない。