見知らぬ女の手に顔を近づけると、フンフンと鼻を鳴らして様子を伺っている。
少しの間それを繰り返すと、やがてじっと何かを考えた後、その子の柔らかな毛並みがスリッと私の手のひらに触れた。
「わ…!」
想像以上に気持ちいい毛並みに思わず声が漏れる。
「お。やっぱりお前のことが気に入ったみたいだな」
「そう…なんですかね?」
「あぁ。拾ったときがあんなんだっただけに、こう見えて人一倍警戒心が強いんだよ、こいつ」
それが嘘のようにスリスリと顔を寄せてくれている姿に、言葉にできない喜びで満たされていく。
「とりあえず一命は取り留めたけど、医者からはいつ容態が急変してもおかしくないって言われてたんだ。痩せ細ってたし大怪我も負って。万が一の覚悟もしてたんだけどな。…けど、こうやって逞しく生きてるのを見ると、生命力ってすごいんだなってあらためて感じるよ」
「……」
その言葉は、私の心の真ん中にずしんと響いた。
きっと、課長が思っているよりもずっと、ずっと。

