可愛いと言いかけた瞬間、あることに目を奪われて言葉を呑み込んだ。
「半年前に拾ったんだ」
すぐ背後から聞こえてきた声にハッとする。
すると課長の気配に気付いた猫が再び顔を上げ、甘えるかのように立ち上がった。
だがその動きはぎこちない。
そんな猫を愛おしげに大きな手が撫でると、全幅の信頼を預けるようにゴロゴロと喉を鳴らし始める。
その姿を見ているだけで、彼らの絆の深さが伝わってくるようだった。
「うちのすぐ近くの小道で蹲ってるこいつを偶然見つけたんだ」
「……もしかして…」
「あぁ。その時は既に事故に巻き込まれた後だったらしい。見ての通り、左足が不自由なんだ」
「…っ」
その言葉に、私の目は再びその猫へと釘付けになる。

