天使の傷跡



「……あれ?」

その時、おろおろと彷徨わせていた視線がふとある一点で止まる。
本棚の向こうにもう一つあったらしい小窓の下に置かれているのは、楕円形のふわふわのクッション。

何故かそこから目が離せず、いつの間にかふらふらと近づいていて___


「あっ…!」


思いの外大きく出てしまった声に、目の前の「それ」がぴくりと動いた。
慌てて口元を抑えると、じぃっとこちらを見つめていた瞳が再び静かに閉じられていく。


「………猫…?」


そこにいたのはいわゆる茶トラと呼ばれる猫。

見るからに寝心地の良さそうなクッションに体を丸めて眠っていた。
年はおそらく一歳前後だろうか。