「ま、そんなこんなでお前とは趣味が合うだろうなと思ってたんだよ。いつかここも見せたいなとずっと思ってた」
「……」
ずっとって、いつから…?
油断すればまた出てしまいそうになる言葉を必死に呑み込む。
「お前さえよかったらいつでも来ていいから」
「…え?」
「何なら俺がいない時でも好きに来て使ってくれていいぞ。鍵なら渡しておくし」
思わず顔を上げた私に、課長はこともなげにサラッと告げた。
「なっ、何言ってるんですか! そんなことできるわけっ…」
「この部屋に魅力感じない?」
「う゛っ、そ、それは…」
感じないわけないじゃないか。
でも、それとこれとは別問題。
いくら趣味のためとはいえ、お付き合いするつもりもない男性の家に上がり込むだなんて、そんなこと…
「青木啓吾のシリーズ、ここにはデビュー作から初版も全部揃ってるけど?」
「えぇえぇっ!!!」
青木啓吾は読書通の間では密かに絶大な人気を誇る作家だ。
一切の改訂がなされていない初版本はかなりの激レア商品となっていて、そうそうお目にかかれる代物ではない。
それが全部揃ってるとな…?!

