天使の傷跡




「ここ、入って」

廊下を進んだ先にある一つの部屋。
課長は扉を開けると、私に入るように促した。

この先に何があるというのだろう。
全く想像もつかなくて少し…怖い。

けれど、何もしないと言った課長の言葉は決して嘘ではないと信じられたから、私は自らの意志でその部屋の中へと足を踏み入れた。


「わ…!」


と同時に思わず漏れた声。

20畳ほどあるんじゃないかと思われる広い空間。そこにはびっしりと本棚が置かれていた。見れば難しそうなビジネス書から有名作家の小説まで、驚くほどたくさんの書籍が並んでいる。
部屋には大きな窓がいくつもあり、そこから入る自然光だけでも充分に明るい。
中央部分には寝転んでもなお余裕があるほどの大きなソファーが置かれ、本の世界に没頭するには最高の条件が整えられていた。

「すごい…!」

あまりにも壮観な光景に、警戒心も一瞬にして吹き飛んでしまった。
吸い寄せられるように本棚の前まで行くと、自分の好きな作家の小説まであって、共通の趣味があったのかとちょっと嬉しくなる。


「どう、気に入った?」