「…水谷、ちょっとこっち来てくれるか?」

「……え?」

そろりと顔を上げると、いつの間にか課長は立ち上がっていた。

「お前に見せたいものがあるんだ」

「見せたいもの…?」

「あぁ。ここじゃ見せられないから、ちょっと来てもらってもいいか?」

「……」


展開が読めずに明らかな警戒心を滲ませる私に、課長はまたしても苦笑いする。

「言っただろ? お前に手を出したりはしないって。誓ってやましいことはしないと断言するから、俺を信じてついてきてくれないか」


…それは、ずるい。

誰よりも尊敬する課長にそんなことを言われて、ノーと拒めるはずがない。

本当なら今すぐに帰った方がいいとわかっているのに。
結局、迷いに迷った私の体は導かれるように彼の後を追いかけていた。