「…あ、あの!」
「ん? どうした?」
…これ以上ここにいちゃ駄目だ。
今の課長からは目には見えない何かが出ている。
それをまともにくらったら完全に彼のペースに流されてしまう。
ここに来たことですら全くの想定外だったのに、これ以上想定外を増やすことだけはできない。
だから、ちゃんと伝えるべきことを伝えなきゃ。
「お風呂を貸していただいたことも、着るものを貸していただいたことも感謝しています。…でも、今後はもうこういうことはしないで欲しいんです」
「…こういうことって?」
さっきまで上機嫌だった課長の声のトーンが低くなる。
それにビビリながらも、これだけは言わないわけにはいかないと、視線を膝の上に置いた自分の手に落としながら必死に言葉を続けた。
「だからっ、ああやって、ずっと待たれたりしても…困るんです。私は既に課長にお返事していますし、こういうことをされても、それが変わることはないので…だからっ…」
情けないほど尻すぼみに声が小さくなっていく。
でもいい加減わかってもらわなければ困るのだ。
それに、私は間違ったことはしていないはずだ。

