「…なんですか?」

ふと視線を戻すと、何故か課長が満面の笑みを浮かべていた。

「…いや。ほんと、お前のそういうところだよ」

「えっ? そういうところって…? わわっ?!」

ぬっと伸びてきた手が何の前触れもなく私の頭をわしゃわしゃと撫でる。

「ちょっ、課長っ?! か、髪が! やめてくださいっ!!」

慌てて両手でその手を掴んで止めようとしたけれど、1本対2本の力の差があるにもかかわらず、課長の手はびくともしない。

結局解放されたのは少ししてからで、せっかく綺麗に乾かした私の髪はぐしゃぐしゃに掻き乱されていた。


「一体私が何したって言うんですか…」

もう怒る気力すら湧いてこない。
手櫛で必死に髪を整えながらせめてもの抗議にと課長を睨むと、さっきと少しも変わらず穏やかにこちらを見つめている姿に、思わず息を呑んだ。

眩しげに細められた瞳に、ざわざわと体の奥が落ち着かなくなっていく。