それにしても…

ここにきてようやく部屋の中に目を向ける。
視界に広がるのは、課長に憧れる女性陣がいかにも喜びそうな今時のスタイリッシュな空間____


___などではなく、昔ながらの純和風な日本家屋。

…そう。課長が住んでいたのは、まさかの一軒家だった。
しかもそれなりに年季の入った。


「甘めのコーヒーにしたけどよかったか?」

「…あ。ありがとうございます。いただきます」

ふと目の前から漂ってきた甘い香りに意識が引き戻される。

「古い家でびっくりしただろ?」

自分のカップを手に向かいのソファーに腰を下ろした課長は、部屋中を見渡しながら少し苦笑いしている。

「あ…というより、一軒家にお住まいだってことにびっくりしました。なんとなく、マンションに住んでるのかなって思ってたので…」

「まぁ普通はそうだよなー」

そんな彼を見ながらコーヒーを一口飲み込む。

…わっ、何これ。すごく美味しい!

そんな心の声が顔から漏れ出ていたのか、課長が嬉しそうに微笑んだ。