この人は一体誰なんだと言いたくなるくらい、仕事の時とはまるで別人だ。

課長はクールだけど面倒見はすごくいいから、部下からはとても慕われている。
けれどどんなに好意を寄せられようとも、決して異性に対して思わせぶりな態度を見せるようなことはないから、近くて遠い人だと嘆いている女の人を見たのは一度や二度じゃない。

誰からの印象もきっと同じに違いないというのに。

この変貌っぷりはなんだというのだ。


「心配するな。今はまだお前に手を出したりしないから。安心していいぞ」

「なな、何を言って…!」

しかも今はまだってなんですか、今はって!

「まぁまぁ、とにかくそこに座れよ。すぐにあったかいもん出すから」

尚も小刻みに肩を震わせながら、課長が私の背中を押してソファーへと座らせる。


…ダメだ。
何をやっても勝てる気がしない。
むしろ焦れば焦るほど彼を喜ばせている気しかしない。

ここは落ち着こう。
落ち着いて。そう、冷静に。

そうして服が乾いたら早々にお暇しよう。
うんそうしよう。