「今週土曜の予定は?」

「えっ?」

「何か予定はあるのか?」

「…いえ、特には、ありませんけど…」

コロコロと変わる話題に何が何だか。

「じゃあ11時にお前の住んでるところの最寄り駅正面口で待ってろ」

「…えっ?!」

驚いて目を剥く私に課長がいつぞやと同じ不敵な笑みを浮かべる。
それって、もしかして…

「お前の家まで迎えに行ってもいいけど。いきなりそれは嫌だろ? だから待ち合わせしよう」

「えっ? …いやいやいや、何かおかしくないですか?!」

「何もおかしくないだろ? じゃあそういうことだから。時間厳守だぞ」

「ちょっ…! 私行かないですからねっ?!」

長い足であっという間に入り口まで辿り着いていた課長の足がピタリと止まる。

もしかして怒らせた…? と過ぎった不安は外れ、振り返った彼の顔は何故か楽しげだった。

「来ないなら来るまで待つだけだ。日が暮れても待ち続けるからな」

「なっ…?!」

「じゃあその資料は頼んだぞ」

「なっ、ちょっ…課長っ?!」

唖然とする私をよそに、余裕綽々の課長は肩を揺らしながらあっさりと資料室から出て行ってしまった。