「いつも悪いなぁ。…おっ、今日の具はしぐれ煮か? 若いのになかなか渋いところを突いてくるな~」

「二十代も折り返したので言うほど若くはありませんよ」

「おいおい、それを言ったら三十代を折り返す俺はおっさんかよ?」

「…それは、ノーコメントで」

ガーンとこれまた大袈裟にショックを受けたフリをする課長を横目に見ながら、ファイルの保管された戸棚へと手を伸ばす。

「…うんっ、美味い! 相変わらずお前の作るメシは間違いないな!」

「…ありがとうございます。言っておきますけど、昨日使った牛肉がたまたま残ってただけで、こんなにいい具が入ることは滅多にありませんからね?」

「なるほど、今日は当たりってことか」

「そういうことです。存分に味わって食べてくださいね」

くくくっと笑う声を背に、取り出したファイルをパラパラと捲っていく。