『………え?』
音もなくデスクの上に置かれたおにぎりに、課長がキョトンと顔を上げる。
『…よかったらどうぞ。いつも予備も含めて二つ持って来てるんです。…その、味と安全性の保証は全くできませんし、万が一の時には自己責任になってもらうのですが…。それでもよろしかったら、ぜひ』
『……』
しばしポカンとした後、課長は突如ブハッ!と盛大に吹きだした。
『お、おまっ、自己責任って…! 面白すぎるだろうが!』
『う゛っ…す、すみません。でも、色々と保証はできないので…』
『くくくくっ…! お前って面白い奴なんだな。なんかこれから先の楽しみが一つ増えた気分だ。…うん、じゃあ有難くいただくな?』
『はい、どうぞ』
よっぽどお腹が空いていたのだろう。言うなり勢いよくおにぎりにかじり付いた課長は、ウマイ!今まで食った握り飯の中で一番ウマイ!!などと、若干引くくらいに大袈裟に褒め称えてくれた。
『いやマジで美味かったよ。なんていうか、ただウマイだけじゃなくて、あったかい気持ちになれる味だな』
『…ありがとう、ございます』
それは私にとってはそれ以上ない最上級の褒め言葉だった。