課長を視界に捉えないようにしたところで響いた音に、あーんと口を開いたままの状態で私の動きが止まった。


『………』


無言のまま再びぶつかった視線に、課長は明後日の方向を見ながら『俺じゃないぞ』と言う。

…まだ何も言ってないんですけど。

『…私でもありません』

今思えば初日に、しかも上司になんて言い草だ!と思ったけれど、何故だかその時はそう突っ込まずにはいられなくて。

『あー…だよな。悪い。犯人は俺だ』

私が言うやいなや課長は額に手を当てて参ったなと言わんばかりに笑った。

『…もしかして何も食べられてないんですか?』

『あー、まぁな。どうもそのあたりは物ぐさになりがちで…。そんな時間があったらさっさと会社に来て仕事した方がましってなるんだよなー』

『……』

『邪魔して悪い。俺のことは気にせず食ってくれていいから』

そう言って仕事を再開した課長をしばらく見つめた後、私はおもむろにバッグの中からもう一つの包みを取り出した。