思うように動かない体が恨めしい。
それでも前に進まなきゃ…!
結局会社に着くまでに30分ほどかかってしまった。これでもいつもよりはずっと早いけれど、もし一刻を争う事態ならかなりのタイムロスだ。
こんなことならタクシーを拾って来るべきだった。
「はぁっはぁっはぁっ…遅くなって、すみませんっ…!」
探し人はすぐに見つかった。
ビルの前にあるガードレールに腰を下ろして長い足を持て余してる男性。
グレーのVネックのサマーニットに黒パンツという、極々シンプルな装いにもかかわらず、その出で立ちはモデル顔負けなくらいに様になっている。
私服、初めて見たけどこんな感じなんだ…
…って、そうじゃなくて!!
「あ、あのっ、課長…!」
「おー、お疲れさん。ははっ、すごい汗だな~。一生懸命急いで来たんだな。偉い偉い」
「…は? あ? えっ?」
見るなり満面の笑みでよしよしと頭を撫で始めた上司が本気で理解できない。
緊急事態は??

