陸は湖にうつる月をぼんやりと眺めていた。
時折吹く風が心地よい。
花火がだんだんとスケールアップしていくから、きっと祭りはもう終わるのだろう。
俺は寝転び目をつむる。

私は階段を下りあの場所へ向かう。
花火が何度も空に輝く。
祭りが終わったら本当に会えない気がした。
角を曲がり湖にたどり着く。
一度呼吸を整えたあと、辺りを見渡す。
人影はない。
その時最後の花火が打ち上がり、静かに散った。
私はゆっくりと空をみた。
「満月、かな?」
一人そうつぶやく。
静かな湖に冷たい夜風が吹く。
一度目をつむり、静かに開けた。
私の隣には君が。
「綾。」
何度も会いたいと願った。
側にいて欲しかった君が今隣にいる。
「陸?陸、私のこと覚えてるの?」
「忘れるかよ。」
俺の言葉を聞かず綾が抱きついてきた。
「約束守ったぜ、綾。」
「ありがとう、陸。」
綾の香りや声。その全てが愛おしく感じる。
陸の側にいれる幸せを改めて感じる。
「綾何年も何十年も側にいるよ。」
「うん。ずっと側にいて。」
そして俺の止まっていた時間が動きだした。