「…わかった。じゃあ数学の教科書とノート出して。」
「は〜い。」
とりあえず、お父さんとお母さんの話題から逸れたことにホッとする。
「あ、その前に花木。」
教科書とノートを取り出したところで、水野くんが話しかけてきた。
その顔も無表情だから、どういう心理なのか全く読めない。
「なに?」
「俺の話、聞いてくれる?」
「話?」
向かい合わせになって座っているわたしたちは、数秒間見つめ合ったあと、水野くんが口を開いた。
「昨日、第2図書室で花木が俺に言ったじゃん。俺が女嫌いなのは、過去になんかあったからなのかって。」
「あ、うん。それがどうしたの?」
「その話、今お前に聞いて欲しくて。」
え。
は、話し相手がわたしなんかで大丈夫なのかな…。