水野くんは、机よりちょっと離れたところの、押し入れの前に立っていた。
「水野くん?何やってる……の…っ!!」
「花木…これ…。」
水野くんの目線の先には、父と母の仏壇があった。
──え、なんで?
お客さんが来るときはいつもそこ閉めてあるのに…。
まさか……朝バタバタしてたから、閉め忘れた…?
わたしはお茶を机の上に置くと、急いで押し入れの襖(ふすま)を閉めた。
「花木、今のって…お父さんとお母さん?」
──ドキッ
「ま、まあね。」
「…わり。勝手に見るつもりはなかったん…。」
「水野くんっ。勉強!勉強しよ!昨日はできなかったでしょ?
昨日の分まで勉強しなきゃ。」
「……。」
水野くんの言葉を遮り、無理やり笑顔をつくる。