「…じゃあ質問を変える。ここに来る前に、廊下で誰かと話した?」


「は、話してないよ。」


「ほんとに?」


「うん…。」


「…ここからってさ、俺たちの教室見えるじゃん。」



た、たしかに見えるけど……。



「俺、見たよ。お前と男が話してんの。」


「!!」


「さっきもそいつのこと考えてただろ。」


「そ、それは…。」


「俺に嘘ついて、本気で俺を落とせるとでも思ってるの?」


「……。」


「言っとくけど、俺そういうやつ嫌いだから。」


「え。み、水野くん…?」



そのとき、水野くんの表情と瞳の色が変わった。



「なにか深い意味があるなら別だけど、平気で嘘つくやつとかほんと無理。」


「ちょ、水野くん?」



誰に言ってるの?

今の言葉は、私に向けられた言葉じゃない。


氷のように冷たいその瞳は、わたしの方を向いてるけど、わたしのことは見ていない。

水野くんは今、誰を見てるの?