小さな恋物語

「はぁ〜、助かった」

何を安心してるの？初めからお前の子供なんていないことは、分かりきったことだったのに。

「……分かってると思うけど……今日のことは誰にも言うなよ？感情に流されてヤった俺も悪かったけど、誘ったお前も……」

隣に座って馴れ馴れしく話しかける男を無視して、私は病院の外へと歩いた。空は夕焼けで染まっていて、見たこともないくらい真っ赤だった。

「……血みたい」

突然、さっきまでのことがフラッシュバックする。シーツについた血。抱き合う男女。彼と私。確かに彼はいた。私の愛した彼はそこに。

「どこ？」

私の全てだった彼はどこへ消えたの？ズキンと下半身が傷んだ。それは、彼と私が一つになった証拠。知らないうちに彼は姿を消したけど、この世界のどこかに彼はいるはずだ。でも、彼は二度と私の前には現れないだろう。