小さな恋物語

しかし、そんな不安とは裏腹に、彼は私を優しく包み込んだ。一瞬、醜い女を絞め殺そうとしているのではないかと疑ったけれど、そんな気配は感じられない。この部屋にあるのは、私と彼と静寂だけ。私たち以外の生命体は、この星から姿を消してしまったのかもしれない。

「好きです」

私の言葉が宙を舞う。

「好きです」

舞う。舞う。舞う。

「松本……」

彼の言葉も舞う。

「どうか、私をめちゃくちゃにしてください」

言葉は舞い、涙は流れ落ちていく。めちゃくちゃにしてください?何を今さら。彼に出会ったときから、私はめちゃくちゃにされているじゃないか。