神様は意地悪をする。恋する乙女にはさらに意地悪だ。だって、バスに彼がいない。悲しいよ。悲しすぎる。いつも頭の中は彼のことでいっぱいなのに、どうして私の隣にいないの。彼と喋りたい、触れ合いたい。私の隣に来てよ。私、いつも我慢してるんだよ。ご褒美があってもいいじゃない。
「気分でも悪いのい?」
隣に座る老婆が、心配そうに私の顔を覗きこむ。そして、自分が涙を流していることに気づいた。
「目にゴミが入っただけです」
「あら、そうなの」
もうダメだ。自分の思考とか、身体の働きをコントロールできなくなってしまった。このまま、無意識のうちに彼の前で取り乱してしまって、軽蔑される日が来るかもしれない。そんな危険性をはらむ自分が恐ろしくなって、ガタガタと震えてしまう。隣の老婆は不審者でも見るように私を見ているけれど、そんなのは気にならない。私には彼以外の人類の前で、気丈に振る舞う必要なんてない。彼の前でのみ、人間らしく振る舞えばいい。というか、そうでなければならない。逆に言うと、彼の前で冷静さを失う恐れがある状況で、私は出歩くべきではない。この地区には彼がいる。外で取り乱しているところを、彼に見られてしまうかもしれない。そんなのは嫌だ。じゃあ、どうすればいい?
「気分でも悪いのい?」
隣に座る老婆が、心配そうに私の顔を覗きこむ。そして、自分が涙を流していることに気づいた。
「目にゴミが入っただけです」
「あら、そうなの」
もうダメだ。自分の思考とか、身体の働きをコントロールできなくなってしまった。このまま、無意識のうちに彼の前で取り乱してしまって、軽蔑される日が来るかもしれない。そんな危険性をはらむ自分が恐ろしくなって、ガタガタと震えてしまう。隣の老婆は不審者でも見るように私を見ているけれど、そんなのは気にならない。私には彼以外の人類の前で、気丈に振る舞う必要なんてない。彼の前でのみ、人間らしく振る舞えばいい。というか、そうでなければならない。逆に言うと、彼の前で冷静さを失う恐れがある状況で、私は出歩くべきではない。この地区には彼がいる。外で取り乱しているところを、彼に見られてしまうかもしれない。そんなのは嫌だ。じゃあ、どうすればいい?

