「好き」

驚いた顔。
そのまま表情がピクリとも動かない顔。

「……って言ったら、どうする⁇」

肩を撫で下ろした彼。

ほら、やっぱりそうだ。
私が我儘を言えば、迷惑なんだ。

「碧生ちゃん、急に大胆だね。
驚いちゃった。」

あははー、と声を上げて笑う彼。

"で、どうするの⁇" と私は返事を催促する。

「……両片想いだったんだね、って言うかな。

それとか、自分から言い出せなくてごめん、って。」

耳まで赤くなっている彼。

……嘘、でしょ⁇
固まった私は彼の長い手に引き寄せられる。

所謂、ハグをされている状態。
回された手からは ぎゅうー、っと 包み込まれている優しさが伝わってくる。

私も彼の身体に手を回して ぎゅうー、っとした。

でも、なによりも 急展開すぎて、頭がついて行けてない。

「撮影準備が整いましたー‼︎
碧生さん、恋さん、スタジオに入って下さい‼︎」

スタッフさんの声が聴こえる。
それを聴いて、私から 離れた彼。

直ぐそこの距離にあるスタジオに向かう直前に 彼は私の隣で立ち止まって

「……って言ったら、どうする⁇」

と耳元で 囁いた。