「恋さん、お久しぶりです。」

「あぁ、碧生ちゃん。

碧生ちゃんに敬語で話しかけられるの、慣れないな……。
なんか、ちょっと淋しい感じもするし……、タメで話してくれていいのに。

あっ、そうだ。今日はよろしくね⁇」

"はい、こちらこそ よろしくお願いします" と言葉を返す。

新発売のシャンプーのCMの撮影。
アイドルの彼と読者モデルの私。

CMに出演するのは、彼と私の2人きり。

……それにしても、 "淋しい" なんて 思ってくれているのなら 本当に嬉しい。

嘘でも、そう言ってくれただけで嬉しいんだもん。

「碧生ちゃんと共演することになるなんて、思ってもみなかったよ。」

"私も" と微笑む。

今では、日本国内で 彼の名前を知らない人は居ない、と言っても 過言ではないくらい 有名で人気のあるアイドルの彼。

「でも、碧生ちゃんの髪 綺麗だもんね。
そりゃあ、シャンプーの宣伝に使いたくなるよ。」

私の髪に軽く触れた彼の手。

「ありがとう、CMに出るの初めてだから 緊張してて……私なんかで大丈夫なのかな⁇」

"碧生ちゃんじゃなきゃダメなんだよ" と私の頭を撫でた彼。

……頭撫でられるの、本当に好き。

安心する。