え?


えっ……?


絶対に怒っていると思ったのに、そんな表情には見えなくて拍子抜けしてしまう。


動揺……。


その言葉がぴったりだった。


いや、でも、まさか。


いつもクールな怜くんが動揺してるなんて、ありえないよね。


視線をキョロキョロさせて明らかに挙動不審で、そしてなぜか顔が赤い。


こんな怜くんの姿を見るのは初めてだ。


「雪村じゃねーから」


無愛想にそれだけ言い、私の手からひったくるようにして写真と生徒手帳を奪った。


その時軽く指先が触れて、とっさに手を引っ込める。


ビクビクしている私を見て、怜くんはムッと唇を尖らせた。


だらしなくシャツを出して着崩した制服と、無造作にセットされたこげ茶色の髪、耳についた小さなピアス。


授業の合間の休み時間はひとりでいることが多いけど、友達がいないわけじゃなく、好んでそうしているだけ。


クールな一匹狼。


人と関わるのが嫌いっぽいのに、昼休みにはクラスの目立つ男子たちと雑談して笑っている。


女子には素っ気なくて、ちょっと怖い。


そんな男の子。


「雪村じゃ……ねーからっ」


念押しするようにそう言うと、怜くんはプイと背中を向けて早歩きで行ってしまった。