パッとしない顔立ち。冴えない自分。私は昔から空気みたいな存在だった。


「じゃあ私は帰るけど、何かあったら遠慮なく連絡してね」


「ありがとう。パパッと終わらせて、私も帰るね。バイバイ」


手を振ると瞳ちゃんも振り返してくれた。


そのあと屋上掃除を手早く済ませ、再び教室に戻った頃にはもう誰の姿もなかった。


シーンとした静けさが漂っていて、なんだかいつもの雰囲気とは違っている。


開けっ放しになった窓から生温い風が入ってきて、髪を揺らした。


「あれ……?なんだろう?」


ふと視線を落とした瞬間、教室の後ろの隅っこに何かが落ちているのが見えた。


そばまで行き、しゃがみ込んで手に取る。


「生徒手帳?誰のだろう……」


勝手に中を見てもいいかな?


名前を見るくらいなら、いいよね?


クラスの誰かの落とし物なわけだし、名前だけ確認したら机の中にそっと返しておいてあげよう。


そう思ってページを開くと、まず目に入ったのは顔写真だった。


ーードキッ


「れ、い……くん?」


どことなくクールな雰囲気を持つ手帳の中の彼は、無表情にこっちを見つめている。


ーー羽山 怜(はやま れい)


それが彼の名前。