じゃあなにがしたいのかって聞かれてもわからないけど、お母さんの言う通りにしなきゃダメだからやってるだけ。
そこに『私』は存在しないんだ。
「どうしたんだよ、ボーッとして」
「ううん、なんでもないよっ!」
顔を覗き込まれてハッと我に返る。
キメ細かい整った肌と、澄んだ綺麗な瞳。
なぜか妙にドキドキして落ち着かなくなる。
そのまま怜くんと電車に乗って、学校の最寄り駅まで特に会話することなく過ごした。
車内には同じ高校の制服を着た生徒がたくさんいて、あからさまに見られたり、ヒソヒソ言われたり。
怜くんといると、やっぱり目立つみたい。
注目されるのは苦手だけど、不思議と嫌だとは思わなかった。
「こっからチャリだから、また学校でな」
「あ、うん……!」
改札を抜けたあと怜くんは駐輪場へ、私は学校へ向かって歩き出す。
じとっとした夏の暑さと、ミーンミンミンと元気に鳴く蝉の声。
もうすぐ夏休みか。
その前にはテストがある。
考えただけで気分が重くなった。
咲季ちゃんみたいになんでも器用にこなせて、頭がよかったら……。
なんの苦労もせずに、楽しくしていられるんだろうな。
もっと明るい性格だったら、怜くんとも、もっと仲良くなれるかもしれない。
もっと話せるかもしれない。
なんて、苦手なはずだったのに不思議。
もし、ああだったら……そんなことばかり考えてる。
私は……私自身が一番嫌い。
殻に閉じこもって、ビクビクしてるだけの弱い自分が……大嫌い。



