ああ、もう。
集中できない。
でもまぁ、ムリはないか。
こんなに騒がしい中でやろうとする方が、まちがってる。
「よう」
え……?
人の気配がして、教科書に向けていた視線がふと上を向く。
れ、怜くん……!?
眠たそうな目で、静かに私を見下ろす彼。
「あ、お、おは、よう」
話しかけてもらえるとは思ってなかったから、完全に油断していた。
緊張して、顔が引きつる。
でも、よかった。教科書で半分顔が隠れているから、変な顔を見られずにすんだ。
「カッコいいー!」
「やばいー!」
他校の子がコソコソ騒ぎ立てる。
絶対に聞こえているはずなのに、怜くんはそんな女の子たちには目もくれない。
「朝から勉強とか、よくやるよな」
「わ、私、頭悪いから……!っていうか、朝会うの珍しいね」
「あー、今日はなんとなく早く目が覚めたから、いつもより一本早いので行こうと思って」
「あ、そうなんだ。それと、昨日は急いで帰っちゃってごめんね」
昨日、怜くんとは地元の駅に着いたところでバイバイした。
慌ただしく逃げるように帰ってしまったことが、ちょっとだけ気になってたんだ。
「家の方は大丈夫だったか?」
「あ……うん」
気を遣わせたら嫌だから、そういうことにしておこう。
早く帰っても遅く帰っても、言われることは同じ。
テスト前だから、余計に勉強しろって言われる。
将来の夢なんて特にない。一流企業に就職したいとか、いい大学に行きたいとか、全然興味がない。



