次の日の朝。


駅のホームで電車を待っていると、少し離れた場所でかったるそうに立つ怜くんを見つけた。


ズボンのポケットに両手を突っ込んで、眠たそうにあくびをしている。


寝ぐせのついた髪がピョンと跳ねていて、思わず笑いそうになった。


あんな無防備な姿、初めて見たかも。


「あの人、カッコよくない?」


「え、どの人?」


「ほら、あそこ!ポケットに手を入れて立ってる」


「あー、あの人たまに見かけるよね!」


「前からずっと気になってたんだよね。声かけてみようかな」


「えー、やめときなよ。相手にされないって!」


「でも、仲良くなりたいんだよね。あんなイケメン、うちの学校にはいないからさー!」


「あはは、言えてるー!」


近くにいた他校の女子高生が、怜くんを見てきゃあきゃあ言ってる。


楽しそうだなぁ。


それにしても、他校の女の子からもモテるなんてさすがだ。


なんて思いながら、少しでも知識を詰め込もうとカバンの中から教科書を取り出す。


昨夜遅くまで勉強していたせいで、今日は寝不足。


だけど、時間がある時は少しでもやらないと。


テストの結果が悪いと、お母さんにがっかりされちゃうから。


「え?やばい、なんかこっちに来てるんですけどっ!」


「ほんとだ!うちらの声が聞こえたとか?」


「いやいや、それはないでしょ」