「あら、咲季。帰ったの?ちょうどいいわ。ご飯よ」
リビングから顔を覗かせたお母さんが、ニッコリ笑う。
「今日は咲季の好きなシーフードパスタよ。デザートもあるわ」
「ほんと?やった」
「さぁ、早くご飯にしましょう」
私には見せてくれないとびっきりの笑顔で、お母さんはたちまち上機嫌に。
咲季ちゃんは自慢の娘……だもんね。
「ほら、咲花も行こ」
私の肩をポンと叩くと、咲季ちゃんはお母さんに続いてリビングに入った。
私もそのあとを追いかける。
いい匂いが辺りに立ち込めて、グーッとお腹が鳴った。
「咲花は食べ終わったらすぐに勉強するのよ?いいわね」
「はい……」
わかってる。
お母さんは、私の将来を心配して言ってくれてるんだってこと。
だけど、でもね……。
時々、ものすごく窮屈で逃げ出したくなる。
苦しくなる。
期待に添えない自分が嫌でたまらなくなる。
どうしたらうまくいくんだろう。
お母さんは、笑ってくれるんだろう。