『まもなく一番線に電車が到着します。危険ですので、黄色い線の内側にーー』
「ムリに付き合わせたみたいで、悪かったな」
ホームのアナウンスが響く中、透き通るような低い声が聞こえた。
恐る恐る横を向くと、頬を掻きながら真顔で私を見下ろす怜くんの姿。
「そ、そんなこと、ないよ」
「今もまだ俺のこと苦手?」
「え……?」
その通りなんだけど、面と向かって言えない。
言えるわけがない。
だから黙り込むしかなかった。
「苦手、だよな……でも、俺は誘われて嬉しかった」
嬉しかった……?
って、どうして……?
マジマジ横顔を見つめていると、次第に怜くんの頬が赤く染まっていくのがわかった。
「あ、いや……嬉しいっていうのは、雪村がいるからって意味じゃねーし!」
そう言いながら耳まで真っ赤になった怜くんは、私からパッと目をそらした。
そんなにムキになって否定しなくても、最初からわかってますよ?
私だって、自分の立ち位置を理解しているつもり。
自分がそんな対象になれるなんて微塵も思ってない。
瞳ちゃんに誘われたから、嬉しいってことだよね?
うん、絶対にそう。
それしかない。
怜くんの好きな人って……。



