「そうこなくちゃ!楽しみだな〜!」
瞳ちゃんがウキウキと声を弾ませる隣で、未だに状況を呑み込めなくて固まる。
とにかく、落ち着こう。
そう思ってオレンジジュースに手を伸ばした。
ああ、でも。
緊張して手が震える。
嫌じゃない。
嫌じゃないけど……なんとなく乗り気じゃない。
楽しみじゃないとか、そんなんじゃなくて。
緊張する。
だって……男子と出かけるなんて初めてだし。
どうして、こんなことになってしまったんだろう。
断れない私のバカ。
大バカ。
でも、だけど……。
嬉しそうにしている瞳ちゃんを見たら、私だけ行かないなんて言えなかった。
それからお店を出たのは三十分ほど経ってからで、辺りはすっかり夕焼け色に染まっていた。
駅の改札を抜けて、瞳ちゃんとはホームへ上がる階段のそばでバイバイした。
そこまではよかったんだ。
そこまでは。
「…………」
「…………」
地元が同じ怜くんとは、乗る電車も降りる駅も同じ。
カフェを出てから別々に帰るのは不自然で、なんとなくここまで一緒に来てしまったけど。
気まずい。
気まずすぎる。
なにを話せばいいの?
さっきまでは瞳ちゃんがいたから会話が弾んでいたものの、いなくなった途端に沈黙が訪れた。



