「ねぇ、怜くんってばー!」


呼び声に気づいたのか、数メートル離れた場所でキキィと音を立てながら自転車は止まった。


振り返った怜くんは、私たちに気づくとビックリしたように目を見開く。


そして綺麗に整えられた眉をひそめて、不思議そうな表情を浮かべた。


そりゃそうだよね。


親しくもないのに急に話しかけられたら、誰だってビックリするよ。


なぜだかドキドキしてるのは、瞳ちゃんが恋に発展する可能性は?なんて言うから……。


そんなの、あるわけないのに。


「ひ、瞳ちゃ……待って……!」


「怜くんに三沢くんとのことを協力してもらうことにするね!教室だと話しかけにくいし、今がチャンスじゃない?」


えー!


見かけによらず、瞳ちゃんって大胆なタイプだったんだ?


三沢くんの親友の怜くんに協力してもらおうなんて!


しかも、男子にこんなに堂々と声をかけるなんて。


瞳ちゃんは私と同じで男子が苦手なんだと思っていたけど、ちがうのかな。


「それに、協力してもらうことでこっちも協力してることになるから一石二鳥だしね」


「え?どういうこと?」


「えへへ、ヒミツ」


「えー!意味がわかんないんだけど」


「まぁまぁ、そのうちわかるよー!」


テヘッと可愛く舌を出しながら、瞳ちゃんはさらに私の腕を引っ張って、とうとう怜くんの目の前までやって来た。