いきなり彼女になるっていうのは、ハードルが高すぎるってことか。


もし三沢くんがフリーなら、瞳ちゃんなら全然狙えると思うけどなぁ。


そんなに謙遜しないで、もっと自信を持っていいのに。


「ところで、咲花ちゃんの恋バナはー?」


「えっ?ないよ」


突然、なにを言い出すの?


「怜くんに助けてもらったんでしょ?ドキッとしたりしなかった?」


なにを期待しているのか瞳ちゃんはすごく楽しげだ。


「な、ないよ」


うそ。


ほんとはドキドキしたけど、恥ずかしくて言えるわけがない。


「いいと思うけどなぁ、怜くん。これから恋に発展する可能性は?あ、それと実はね……」


恋に発展する可能性!?


「そ、そんなの……ありえな」


テンパっていると、一台の自転車がスーッと横を通り過ぎて行った。


「あ、ウワサをすればだね」


見覚えのある後ろ姿と背格好。


怜、くん……?


「おーい、怜くーん!」


ドキッとしたのもつかの間、瞳ちゃんが大きな声を張り上げた。


ひ、瞳ちゃん……?


「待ってー!止まってー!」


ええっ!?


止まれって……!?


ギョッとしながらその光景を見つめる。


「咲花ちゃん、ちょっと走ろう」


「え?」


瞳ちゃんは返事も聞かずに、私の腕を掴んで走り出した。


ええっ!?