落ちないように腕に力を入れた。


だけど、もう……ダメ。


倒れるっ!


とっさにギュッと目を閉じた瞬間ーー。


背後に人の気配がした。


トンッという軽い衝撃のあとに、背中全体に感じる体温。


うしろから抱きすくめるようにして、誰かが支えてくれたんだとわかった。


振り向いた私の目に飛び込んできたのはーー。


「れ、怜、くん……!」


わ、わわ!


至近距離で目が合って、固まったまま動けない。


「大丈夫か?」


「え?あ、うん……」


腰に回された腕が、しっかり抱きとめてくれている。


サラサラの髪の毛が頬に当たって、顔が一気に火照った。


ーードキドキ


やだ、なんでこんな時に……。


しかも、相手は苦手な怜くんだよ?


「雪村ー、マジでごめん。急いでて、思わず」


申し訳なさそうに眉を下げて謝るのは、怜くんの親友の三沢くん。


どうやら、教室から急ぎ足で出てきたのは彼らしい。


「だ、大丈夫だよ……!」


「マジ?チビだからぶっ飛ばされなかった?」


「う、うん……!受け止めてくれたから」


チラッと後ろを見て、頬がカーッと熱くなる。


「おー!こんなところで、怜のムダにデカい図体が役に立つとはな!」


「おまえは……一言余計なんだよ」


楽しそうに笑う三沢くんと、気だるげな表情を浮かべるクールな怜くん。


ふたりは対照的だけど、とても仲がいい。


「お前も……チビのくせに、こんなにいっぱい重いもん抱えてんじゃねーよ」


耳元で低い声がした。


密着しているせいなのか、話す時の振動が伝わってドキドキする。


大きくてゴツゴツしてて、たくましい体つき。


ほどよく筋肉のついた腕。