訪れる沈黙がとても痛い。
できれば早く美術室に戻りたいのに、まだ二十分以上も残っている。
話題に困ることは目に見えていたのに、どうしてここにいることを選んでしまったのかな。
「あのさ」
「え……?」
「そんなにビクビクされたら、さすがの俺でも傷つくんだけど」
「あ、ご、ごめ……」
そんなつもりはなかったんだけど、居心地が悪いと思っていたのは事実。
無意識のうちに態度に出ていたのかもしれない。
まっすぐ突き刺すような冷静な瞳に、ますます萎縮してしまう。
「あんまり目も合わせようとしないし、俺のことが嫌いなのは知ってるけど」
ギクリとした。
そんなに態度に出てたのかな?
でも、だけど。
「嫌い……じゃないよ。ただ、男の人に慣れてないだけで」
こう言っておけば変に思われることはないはず。
もちろん、本当のことだ。
「慣れてない、か」
スカートの上に置いた汗ばんだ拳をギュッと握りしめる。
納得してくれたのかはわからなかったけど、怜くんはそれ以上は話しかけてこなかった。