「ユーリってば、また雪村(ゆきむら)さんに押しつけて〜!かわいそうじゃん」
「だって〜!早く行かなきゃコウくんがうるさいんだもん。咲花ちゃんなら、快く代わってくれるしさっ!」
「まったくもう」
呆れ顔でため息を吐いたのは、前野さんの友達の土方(ひじかた)さんだ。
「アズサだってシンくん待たせちゃ悪いでしょ?だからほら、早く行こっ」
前野さんに引っ張られるようにして、教室を出て行くふたり。
ふたりともスラッとしていて、クラスの女子の中でもダントツに目立っている。
おまけに派手な男子のグループとも仲が良くて、よく一緒に笑い合っているのを見かける。
クラスでの地位は最上級。
そんな彼女に逆らえるはずもなく、前野さんもそれをわかっているのか、こんな風にお願いされるのは初めてじゃない。
できるだけ波風を立てたくない私には、拒否権なんて皆無。
そっと椅子から立ち上がった。
放課後の教室には、まだクラスメイトがたくさん残っている。
その中で帰り支度をする友達の瞳(ひとみ)ちゃんの席まで行き、肩を叩いた。
「……ごめん。私、屋上掃除しなきゃいけないから、先に帰って」
「また前野さんに頼まれたの?」