ずっと前から、お前だけ。



なんて、そんな失礼なことは言えないけどね。


なにも言わない方が丸く収まることを知っている。


だから私は人が不快に思うような余計なことは、なにも言わない。


「できたのか?」


「え?あ……うん」


短くそう返事をすると、怜くんは「そうか」とだけ言ってスケッチブックをパタンと閉じた。


どうやら彼も描き終わったらしい。


「じゃ、じゃあ美術室に戻ろっか」


描く場所は自由だったから、誘われるがままに空き教室まで来たけど、終わってしまえばもう用はないはず。


そそくさと立ち上がって、出て行こうとした。


「まだ三十分以上も残ってんじゃん」


スマホをチラ見したあと、机に頬杖をついて私の顔を見上げる怜くん。


「いれば?戻ったって、どうせやることないんだし」


「え……いや、あの」


ふたりきりの空間は居心地が悪くて、一刻も早くここから立ち去りたいんだけど……。


とは言えず、この場から動けない。


ど、どうしよう……。


我慢して言う通りにするべき?


それとも、自分の意見を押し通す?


「俺のことが嫌なら、べつにいいけど」