ずっと前から、お前だけ。



ドギマギしながらなんとか自分の席までたどり着き、ホッと胸を撫で下ろす。


どうやら怜くんはまだ登校していないようだった。


私の席は窓際の真ん中で、怜くんの席は三列またいだちょうど真横にある。


ちなみに、怜くんの前が瞳ちゃんの席だ。


チャイムが鳴る五分前、クラスメイトが次々とやってきていつものように騒がしくなり始める。


「よう、怜。今日もギリギリだな」


「寝坊した」


眠そうにあくびをしながら、朝からテンションの低い怜くん。


彼が席に着くのを、ソワソワしながら見守った。


その間怜くんがこっちを見ることはなく、いつもとなんら変わりのない風景が広がっている。


「怜、今日の帰りさー、カラオケ行こうぜ。隣のクラスの女子も一緒」


「はぁ?ダルいからパス」


「お前、この前も来なかっただろ。たまには付き合えよ。彼女がほしいと思わないのかよ?」


「めんどい。つーか、ダルい」


いつもは聞こえてこない会話が、やたらと耳に入ってくる。


それだけ今は怜くんのことを意識してるってことか……。


っていうか、教室で話しかけるのはムリだ。


「なんでだよー!羽山二号はすっげー乗り気なのに。同じ苗字なのに、性格は正反対だよな」


「そうそう。こいつ、天使ちゃんに告られてもキッパリ断ってやがんの!」


怜くんの周りに男子たちが集まって、騒ぎ立てる。


うちのクラスには羽山という苗字の男子がふたりいて、怜くんのことは下の名前で、もうひとりは男子たちの間でなぜか二号と呼ばれている。


先生ですらそうなので、このクラスではすっかり定着してしまった。