記憶の中のきみ。

「……………っさみ、…ぅさみ、うさみ」

誰かに名前を呼ばれる。

「うさみ!うさみ!?」

誰…?私の名前を呼ぶのは…
どうしてそんなに必死なの…?
私はそんなことを考えながら、ゆっくりと目をあける。

「うさみ!?あぁ、よかった!!
うさみ!!」

「おかあ、さん…」
なんで私の声、こんなにくぐもってるの?
横に視線をずらすと、点滴のくだが見えた。
なんで?私、もうぜんそくは治ったでしょ…?

「ああ、良かった!本当に良かった」

お父さんまで、なんか涙ぐんでる…。

「お母さん、お父さん、私…」

「うさみ、お前、事故に巻き込まれたんだよ。お前が座ってたベンチに車がぶつかってな…」

お父さんが辛そうに言う。
お母さんも、続けて言った。

「近くを通りかかった人がすぐに110番してくれたから助かったのよ…!」

お母さんは涙ながらにまだ点滴のくだのついたままの私の手をぎゅっと握りしめる。

「ごめんね…また辛い思いをさせちゃうね…」

「いいんだよ、お母さん。今回は私が悪いんだから…」

「でもなんで、うさみはあのベンチに座ってたの…?」

「え……それは……」

そこで様子を伺っていた先生が割って入る。

「お母さん。これからうさみさんは検査がありますので、これくらいに…」

「うさみっ!!」

先生の話にかぶるように、また違う声が私を呼んだ。
背の高い男の子が先生を押しのけるようにして私のベッドの横に立つ。

「うさみ………」

……?

「うさみを心配して孝太郎君も来てくれたのよ……」

こうたろう、くん?
私、こんな人知らない…

「こうたろう、くん?私、あなたに会ったことあったっけ…」

「……!?」

一瞬でこの場が凍りつく。
私、変なこと言ったかな…?
こうたろうくんの顔がみるみる歪んでいく。

「う、うさみ…あなた…」

「ちょっとお母さん。いいですか?」

先生がお母さんを呼び止める。
とぎれとぎれ、話をしていることが聞こえてきた。

「うさみさんは…………………………しているようです。」

「えっ!?そんなっ……………のことも!?」

「はい…おそらく。」

お母さんがすすり泣き始める。
お父さんがその肩をだいた。
どうしたんだろう…
すると、その男の子が話しかけてきた。

「うさみ…ほんとに俺のこと、わからないか?」

「………………?」

本当に、なにも思い出せない。
少し、頭が痛くなってきた。

「俺、宇佐美孝太郎だよ。幼稚園からの幼なじみで、今日も、お前の親友の誕生日パーティーをやる予定だったんだ!!」

震える声からだんだんと大きくなっていく。
それでも、なにも思い出せない。
私の親友…?
誕生日、パーティー…?
宇佐美孝太郎…?
だれ…?
なに…?
もう、全部わけわかんない!

「ごめんね、私、なにも思い出せないの。傷つけて悪いんだけど、今日は、もう……………」

「嘘だろ…?」

その男の子は、手で口元を押さえる。
だんだんと、頭痛がひどくなってきた。
いた、い。
思わず、手で頭を押さえる。
ガンガンと頭が鳴っている。
なんで、こんな…っ

「い、たい…!」

「ちょっと君!あまり刺激を与えるな!!」

「うさみ!?うさみ!!」

いたい、いたいよぅ。
誰か、助けて…っっ

「うさみっっ!!」

私の名前を呼ぶ声がする。
なぜか、懐かしい……
その声を聞いて、私の意識はふっと途切れた。