太一side





パシャッ




そう響き渡るシャッター音が

練習試合前の空気を和らげる。

今までに見てきた環奈よりも、

リラックスした表情がうかがえた。


隼人もさっき言ってたけど、

本当に楽しそうだ。


向けられるレンズの先は俺ではない。

花崎の中では1番写真を撮られていた俺でも、

仲直りしたあいつがいれば、そうでもないようだ。

環奈にとっては良いことであるハズなのに、

腑に落ちない自分がいる。

でも、あいつがいなければ今の環奈はいないんだ。


そう考えながら環奈の方を見ていたからか、

環奈が俺の方を向いてびっくりしたように後ずさった。

練習中に俺と目が合ったことなんて、

ほとんど無いからな。




「太一、君?」


「…悪い」




今はその一言しか出て来なくて、

練習に集中し直す。

解決して欲しいとあんなに思っていたのに

解決したら今度は嫉妬でおかしくなりそうだ。


今の俺、

最高にカッコ悪い。