「え?」




目の前で起こったことに反応出来ずに

固まってしまう。

中学の頃の裕也君と恵吾先輩を知っているから、余計にだった。


予想していたよりも速くなっている速攻。

これを使う百合ヶ丘に勝っていた花崎は

やっぱりとても強いんだと実感し直す。


裕也君のフォーム、

綺麗だな、やっぱり。




パシャッ




今度こそしっかりとシャッターを切った。


私も負けていられない。


そう心の中で意気込むと、

私の横に誰かがたった。




「恵吾先輩…」


「昨日は色々あって疲れたでしょ?

ごめんね、中学の時のこと。
俺に非が全く無いってわけじゃないと思うんだ。」


「い、いえ!本当に私の勘違いで!」




そうニコッと微笑んで私の方を向く恵吾先輩。

この八方美人に彼女である美月ちゃんは悩まされているのだと聞いたことがある。

まだ、付き合っているのかな…?




「桃華は、中学卒業と同時にまた引越して行ったよ。

一ノ瀬、この2年バレーばっかしてたからめっちゃ上手くなっちゃってさ。

また機会があれば、一ノ瀬の写真、撮ってやって?喜ぶよ、心の中で」


「こ、心の中で」




その言葉に笑ってしまいながらも、

裕也君を見る。


なかなか素直にならない裕也君が、

昨日は私のために全てを話してくれた。

今更だけど、本当に凄いことのような気がする。


綺麗なフォーム。

練習に練習を重ねた証拠だった。


誰がなんと言おうと、

私はそんな裕也君のファン1号。

これからも、写真を撮り続けたいと思う。




「恵吾先輩、あの、写真撮ってくれませんか?」


「え!?俺が!?」




そう驚く恵吾先輩も、私の視線ですぐ気付いたようだ。




「一ノ瀬!ちょっとこっち!」


「あ?」


「だから怖いって!たまには笑いなよ」